セルフ・ブランディング
〜自分のビジネスをコンテンツ化することの有用性〜
突然、会社がなくなる時代になった。会社の売上、利益に貢献していればリストラにならないという時代はもう過ぎてしまった。今はM&Aが盛んに行われている。M&Aによるリストラは、社員の能力の優劣は関係ない。すべてパワーバランスで決まってしまう。
ここで問題が生じる。多くの優秀な社員は、1を10に育てることはできても、0を1にできない。非連続の時代に求められるのは、0を1にできる、すなわち、ビジネスを生み出せる人材である。そのため、多くの優秀なビジネスパーソンがリストラされることになる。これが新しい社会のルールである。
多くのビジネスパーソンが、自分の会社と商品・サービスのブランディングに力を注いできた。しかし、能力に関係なくリストラされる時代には、自らをブランディングする必要がある。「セルフ・ブランディング」である。セルフ・ブランディングは、0を1にする作業そのものである。本稿では、セルフ・ブランディングの方法と考え方について述べてみたい。
■コンサルタントがやってはいけないこと
コンサルタントが(メインで)やってはいけないことが2つある。一つは、「情報の切り売り」である。何かで得た情報に何の工夫もせずに顧客に提供するだけでは、自分をブランド化することはできない。例えば、資格の学校の教師の名前を何年も覚えている人はほとんどいない。覚えていたとしても、それは勉強を教えてもらったからではなく、人間として尊敬できたからであろう。情報を切り売りする人は、相手から見ると、“誰でもよい”存在になってしまう。誰でも良いから名前も覚えてもらえず、高いフィーは取れない。もう一つは、「専門特化しすぎること」である。これは意外なことだと思われるかもしれない。ランチェスターの法則に反するのではないかと指摘を受けるかもしれない。しかし、コンサルタントだけは例外だと筆者は考えている。同じ業界でA社に教えたことをライバルのB社にも教えるということを続けていると、悪い口コミが発生することになる。さらには、比喩表現に乏しくなる。これはコンサルタントとして致命的である。
■セルフ・ブランディングの基本的手法
専門特化しすぎることは良くないが、ポジショニングとターゲティングは非常に重要である。花王の「ヘルシア緑茶」が発売半年で100億円売れたのは、「体脂肪が気になる方に」という明確なメッセージをターゲットに届けたからである。ライオンの歯磨き粉「ムシ歯になりやすい人のクリニカ」も同様である。セルフ・ブランディングの第一歩は、「ポジショニング」である。どこの場所を押さえるかということが重要になる。著名なコンサルタントの阪本啓一氏は「ブランドで最も重要なことは、『記憶に粘りつく』ということ」だと述べている。記憶に粘りつくポジショニングでなければ意味がない。例えば、今、医療界のヘッドハンティング市場で最も求められている人材をご存じだろうか? 薬事に詳しくて英語が話せる人材である。このように、“プラス1”を持っている人材は、簡単にセルフ・ブランディングをすることができる。ブランディングの名著「ブランディング22の法則」には、次のように書かれている。
「もしあなたがブランドを築きたいと思うなら、見込み客の頭の中に1つの言葉を所有することに集中すべきである。他のだれも所有していない言葉をである」
ポジショニングの次は「磨きをかける」ことである。誰にも追いつかれないレベルまで勉強し、実績を積むことが求められる。
そして、「ブランディング」である。言い換えれば、自分のキャラクターのマネージャーとなって、自分をプロモーションしなければならない。コンサルタントの多くが、実はこのことが苦手のようである。
コンサルタントのように情報や問題解決をビジネスにしている人は、仕事をデータ、すなわちコンテンツに残すことが望ましい。
できれば書籍、少なくとも業界誌などに連載を持つと良い。最近では、ブックファンドという方法もある(英治出版が提供しているサービス。自費出版よりもレベルが高く、書店に流通される)。書く→講演する→個人のホームページで情報提供する→情報に人が集まる→集まった人にさらに情報を提供する(販売する)→顧客化する――という流れをつくることにより、セルフ・ブランディングはより強化される。
■重要なコンテンツ化
さきほど、「情報の切り売り」をしてはいけないと述べた。コンサルタントなど、情報をビジネスとするビジネスパーソンは、情報の切り売りではなく、情報の“コンテンツ化”をする必要がある。筆者は、これからのMRに必要な能力を「MRに求められる“7つの眼”」というコンテンツにして、執筆や講演活動を行っている。このようにコンテンツ化することにより、オンリーワンの存在になることができる。この「7つの眼」と関連して、「勝ち残るMRになるための“4つの条件”」というコンテンツも提供している。
他者が作成した有名なコンテンツ、プログラムには、「7つの習慣」、「阪本塾」(阪本啓一氏)、「女性起業塾」、「成功の9ステップ」などがあるが、それぞれに共通していることは、情報の切り売りではなく、“何かをインストール”するということである。相手に自分の考え・ノウハウをインストールすることにより、見込み客の頭の中にあなたのブランドが刺さるのである。
セルフ・ブランディングを一言であらわすと、新しいカテゴリーをつくることである。美輪明宏、矢沢永吉の代わりはいるだろうか? これがカテゴリーを作る強さである。
以上