危機ではない、衰退だ

 日本人が付ける名称や言葉の中には、外国人から見ると「?マーク」を付けたくなるようなものが少なくない。例えば、「**防災センター」の防災は「disaster prevention」と英語で書かれているが、これを見た外国人に、「日本は災害を予防する(起こらせない)方法を知っているのか? 教えて欲しい」と聞かれるため、非常に困る――これは、軍事アナリストでもある帝京大学教授・志方俊之氏から聴いたことである。

 同様に、“危機”という言葉の使い方もおかしいと言う。最近の経済誌を見れば分かるように、“危機”という言葉が誌面に溢れている。しかし、志方氏は、地震などの災害は突然起きるから“危機”であるが、現在の日本における経済や教育で言われている“危機”は、突然そうなったわけではないので“衰退”である、と述べていた。

 医薬品業界で今言われているのが「調剤薬局経営危機」である。マイナス1.3%の調剤報酬改定に加え、平均6.3%ダウンの薬価改定が、ここ数年、バブル的に上昇してきた処方せん単価にブレーキをかける。おまけに、再診料への逓減制の導入、長期投薬規制の撤廃、大病院の外来抑制策(特定療養費制度の拡大)――といった医療機関サイドへの改定内容が、特に大病院の門前薬局の経営に大きなダメージを与えると予想される。しかし、このことは、これまでの診療(調剤)報酬改定の流れを見ていれば予測できたことばかりである。業界紙(誌)には、調剤薬局チェーンの大幅な減収のシミュレーションが紹介されており、日薬前専務理事の渡辺徹氏は薬剤師1人当たり月間マイナス7万円になると発言した。しかし、本当にこのような薬局ばかりかというとそうではない。筆者が取材した薬局では、横ばい以上になる見通しだ。自家製剤、一包化、在宅、そしてインテリジェントフィー――変化の流れを読んでいれば、たとえ内服薬の調剤料でマイナスになっても、他の点数でカバーできるはずであ
る。

 志方氏はこんなことも言っていた。「日本人は『あってはならないこと』は『ない』と考える習性がある」――「調剤薬局経営危機」に対する債権管理問題など、「あってはならないこと」への対策を先送りしていないだろうか? 医薬品卸の顧客が倒産するのと、消費者金融の債務者が1人夜逃げするのとでは、両者の売上総利益率の差を見れば比べものにならない。多くの調剤薬局が“衰退”することが明らかになった今、調剤薬局の債権管理問題は、「最優先事項」の領域に入っていなければならない。

 最後にもう一度確認しておきたい。どんな組織の経営危機も突然起こるものではないということを。

初出:2002/05/01

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