小さな利益よりもイノベーション!!
| 薬事法改正案が平成14年7月25日の衆院本会議で可決・成立した。改正の主なポイントは、(1)医療機器に係る安全対策の抜本的な見直し(医薬品以上に多様な技術・素材が用いられる医療機器の特性に対応)、(2)「バイオ・ゲノムの世紀」に対応した安全確保対策の充実(生物由来製品の安全確保に向けての法的整備は、急務の課題)、(3)市販後安全対策の充実と、承認・許可制度の見直し(企業の安全対策責任の明確化と、国際整合性を踏まえた製造承認制度の見直し)―である。 中でも、(3)に盛り込まれている「元売承認制度」の導入は、医薬品業界を“活性化”する可能性を秘めている。 元売承認制度とは、医薬品開発者が製造設備を持たなくても承認保有権者となることができる制度である。同制度の活用により、製造工場の分社化、委受託製造の拡大や、海外生産拠点の拡大など経営の合理化が進むと見られている。実際に、設備が充実しているジェネリックメーカーは、先発品企業からの委託をたくさん受けることが予想されるため鼻息が荒い。 儲かるのはジェネリックメーカーだけではない。元売承認制度が導入されると“ファブレス製薬企業”が実現可能なため、既存の医薬品卸が“メーカー”として活路を見出すことが可能だ。現に、一部の医薬品卸には「メーカーになりませんか?」という誘いが来ているようだ。 規制業界である医薬品業界における制度改正(規制緩和)は、環境の激変を意味する。今回成立した薬事法改正、健保法等改正、健康増進法―という3つの大きな環境変化に対して、何のリアクションも取らなければ、かなり高い確率で業績が低迷するに違いない。これでは、マイナス改定にクレームを付けるだけで必要な努力をしない一部の医療機関・調剤薬局と同じになってしまう。 しかし、製造工程に関わるアウトソーシングの委託と受託、医薬品卸のメーカー化だけではイノベーションとは言えない。青山大学の野口悠紀雄教授は、近著「日本経済 企業からの革命〜大組織から小組織へ〜」(日本経済新聞社)の中で、「現在日本が直面する諸問題に対する本質的な解決策は、日本の経済構造を変えることだ。日本産業の生産活動が『中国にもできること』であるために、物価の下落と実質賃金の低下が起こるのだ。日本の産業が『中国にはできないこと』に進化すれば、中国をはじめとするアジア諸国と適切な分業体制を実現できる」と述べている。 製薬企業や医薬品卸には、“異業種にはできないこと”の部分で利益が出るようなイノベーションを期待したいものである。 初出(2002/08/15) |