MRは“個人事業主化”する

 

 某大学病院の教授に「MRに求めること」を質問した。あまりに唐突に聞いてしまったので、この教授は答えに戸惑ったが、数秒後に「医薬品情報の消化作業をサポートしていただきたいですね」という答えが出てきた。おそらく、同じ様な悩みを抱える医師がほとんどではないだろうか?

 一方、医師に“消化剤の投薬”を期待されるMRも、本社などからの情報の洪水に溺死寸前という話も耳にする。情報がたくさんありすぎる、または、他業界の人から羨望の眼差しを注がれている、至れり尽くせりの教育・研修サポートなどの要因が、“本当に自分や顧客にとって重要な情報は何か?”という感覚を麻痺させてしまっているのかもしれない。

 情報は、それを得る人の能力と必要性によって重要度が変わってくる。しかし、その情報が多すぎると、自分にとって重要な情報を見逃してしまうリスクが高まる。先に一般紙で大きく取り上げられた塩酸チクロピジンの副作用問題も、製薬企業側の「医療現場に徹底できなかった」という反省よりも、医療現場が情報の消化不良を起こした結果ではないかとも推測できる。

 新薬の開発競争が幕を開け、MR6万人時代の到来がすぐそこまで来ている。すべてのMRが顧客のニーズ・心を意識したMR活動が出来るとは限らない。競争が激化すれば、当然、会社から求められるノルマは厳しくなり、顧客満足にはほど遠いMR活動が繰り広げられる可能性が高くなる。その結果、「もう、来なくていいよ」という言葉を医師や薬剤師に言わせてしまうことになるのではないだろうか。

 ここの問題点は何だろうか? 一つ挙げられることは、これまで製薬企業がMRに対して行ってきた様々なサポートが、MRの“がんばる”対象を企業向けにしていたことである。それは、ユート・ブレーンの書籍「21世紀のMR像パート(2)」の中で紹介しているアンケート調査結果で、医療従事者が求めているものと、実際にMRが提供しているものに大きなギャップが生じていることからも分かる。

 自らが所属する企業のためにがんばってお金がもらえるのは「アルバイト」だけであることを忘れてはならない。顧客の満足度と利益は非常に相関性があると言われている。つまり、MRの“がんばる”対象は、所属する企業ではなく、顧客しかないので ある。

 このような視点に立つと、すべてを変えて行かざるを得ない。MRを“個人事業主化”して、彼(彼女)らが顧客のために必要だと思う情報・スキルを自分の意志で収集できるような仕組みが必要になってくるに違いない。