トップに戻る

コミュニケーションの法則を活用する


 医薬経済社「医薬経済」2003年4月1日号掲載

1つ眼 2つ眼 3つ眼 4つ眼 5つ眼 6つ眼 7つ眼


 

 「今度は君の番だよ、クラリス」――1991年のアカデミー賞で主要部門を独占したサイコサスペンス映画「羊たちの沈黙」。アンソニー・ホプキンス演じるレクター博士と、ジョディー・フォスター演じるFBI訓練生クラリスの2人の掛け合いは、映画ファンの目を釘付けにした。
 しかし、この名作は医師や薬剤師とのコミュニケーション不足に悩むMRの良い教科書となることに気付いた業界人はどれくらいいるだろうか…?

■コミュニケーションの4つの法則
 筆者はMRほど教育に恵まれている職種はないと思っている。入社してから半年間で1000時間以上研修する企業も少なくない。他業界の人は自費で研修に参加しているケースも多いので、医薬品業界は教育に関して羨望の目で見られていると考えて良い。
 研修を受けて身につけた知識の量が、実績と結びつけば問題ないのだが、実際は知識と実績はまったく比例しない。学習塾Z会のテレビCMではないが、「授業と本番は、違う」のである。
 そこで今回は、MRが持っている知識を有効にアウトプットするために身につけたい「7つの眼」の3つ眼顧客の感情を読む眼%チにコミュニケーションの法則についてご紹介したい。


<法則1:コミュニケーションとはやりとり=
 嫌われるセールスパーソンの特徴は、どの業界でも同じだ。製品の説明をしてしまうのだ。たとえ売れたとしても、「わかった、わかった。処方するから、もう来なくて良い」となる。
 MRが製品の説明をしないでどうするんだ!という怒りの声が聞こえてきそうだ。確かに製品の説明はしなければならない。しかし、製品の説明をして良いのは、顧客がそのことに対して興味がある場合に限るということを忘れてはならない。興味がない人に説明をすると99%嫌われる。引っ越しした当日に、引っ越し業者があなたの自宅に来て営業されたら話を聞くだろうか?
 また、顧客が自社製品に興味を持っていたとしても、MRのディテールの内容が顧客の興味のツボ≠ゥら外れることがある。そうならないためには、一方的に説明するのではなく、やりとり≠心がける必要がある。会話の中で、90%以上MRが話していた、という状況にならないようにしてほしい。話したら聞く、聞いたら話す――冒頭で紹介した「羊たちの沈黙」の名場面を思い出してほしい。

<法則2:人は話を聞いてくれる人を好きになる>
 コミュニケーションの研修会に参加した時、講師の方が参加者に「コミュニケーションを取りやすい好きな人の特徴」を挙げさせた。すると、参加者のほとんどが「自分の話を聞いてくれる人」と答えた。
 「俺の話を聞け」(中高年の男性に多い)という人は嫌われる。自己満足のように話すMRも嫌われる。顧客の(1)性格・価値観、(2)置かれている状況、(3)過去の体験・経験――を早い段階から掴むことが良い人間関係を築くことに繋がる。ドアを開ける前に部屋に入ることはできないように、顧客に「どうぞお入りください」とドア≠開けてもらう必要がある。
 顧客の(1)〜(3)を把握したら、今度はニーズの把握に移る。「このニーズがあるから、私はAという製品の説明をさせていただくのですよ」という流れをつくることが望ましい。
 
<法則3:送り手の意図は関係ない。受け手の能力・立場・感情によって変わる>
 「私が話しかけると、いつも先生が不機嫌になるのはなんでだろう」
 誰でもこのような経験をする。しかし、「コミュニケーション=相手の反応」であることを知っていれば、失敗を繰り返すことはなくなるはずだ。
 「自分が話しかけたら、先生が不機嫌になった」=「怒ってくださいというコミュニケーションを取っていた」ということである。
 多摩大学の田坂広志教授は、「顧客とは、私たちのこころの姿勢を映し出す鏡であり、私たちの姿を映し出す鏡である」と述べている。この言葉は、「コミュニケーション=相手の反応」という法則を見事に説明してくれている。
 顧客の示す反応が、MRの望むものではなかった場合、それは「あなたのコミュニケーションの方法は間違っていますよ。早く改めてくださいね」という顧客からのメッセージだと受け取ってほしい。

<法則4:与えるもの=得るもの>
 この法則は1〜3の法則を一言で表すものと考えていただきたい。3つの法則を実践し、常に顧客に誠実な態度で接していれば、必ず結果は出てくる。長期的に見れば、Win-Winの関係が必ず成り立つ。逆に、顧客の利益を奪うような活動をすると、一時期はWin-Loseになって数字が上がったとしても、長期的に見れば、必ず、MR自身もLoseになる。
 これはMRと医師・薬剤師との関係に限らない。MRとMSの関係にも言えることである。

■まずは薬剤比率を意識しよう
 突然話題を変えたいわけではない。コミュニケーションの法則を使う前に、ぜひとも意識しておいていただきたいことを最後に説明する。
 MRの話はついつい「薬100%」の状態になりがちだ。しかし、その話を聴いている医師の頭・心の中に薬が占める割合はどれくらいだろうか?仮に、薬剤比率の20%前後としておこう。MRがその他80%の部分を理解しながらコミュニケーションするのとしないのでは、全く違う結果が得られるはずだ。
 Don’t think. feel=i考えるな、感じろ!)
 ブルース・リーが映画の中で弟子を指導している時の名台詞である。コミュニケーションやセールス・スキルの本はたくさん出ている。しかし、本の内容を考えながらコミュニケーションを取ることは難しい。肌で感じるしかないのである。

(“コンサナリスト”川越満)