仕事・人生の結果は、“能力×熱意×考え方”の合計値である。能力もあって仕事に対する取り組み方も素晴らしいのに、結果が出ないビジネスマンは多い。その原因のほとんどが“考え方”が間違っていることにある。水たまりに釣り糸を垂らしても魚は釣れない。自分が釣りたい魚の種類が、どの海や川に生息しているのかを把握しておかなければ、どんなに早起きしても、どんなに良質な餌を用意しても、希望通りの魚を釣ることは不可能なのである。
医薬品業界では、これから数年間に、海や川だと思って釣り糸を垂らしていたら、いつの間にかそこが水たまりになってしまった、ということが次々と起こる。一方、自分が釣りたい魚がどんどん増殖する海や川も出てくる。
自分が釣りたい魚は何なのか? そして、その魚を釣るにはどこに行けば良いのか?――これをMR活動に置き換えると、自分の取り扱う商品は何か? この製品を今後も良く処方する可能性の高い医療機関はどこなのか? となる。
今回は、このような顧客を見る眼を養うための“考え方”を紹介したい。■MRに“3つのこと”をやらせる
筆者が医療環境の変化について講演する時、若い女性の写真を使うことがある。1枚目の写真はコギャルの写真で2枚目の写真は綺麗な19歳の女性の写真だ。オチは、この2枚の写真の女性が実は同一人物だということだ。“たった1年で顧客はこんなに変化する”ということを伝えるには、非常に効果的な写真だ。
しかし、残念ながら、我々の顧客である医療機関、調剤薬局は、若い女性のように、外見で変化を実感することは難しい。どうすれば顧客の変化が分かるのか? それには、「7つの眼」の2つ眼“顧客を見る眼”を磨く必要がある。<2つ眼:顧客を見る眼>
数年前まで、医薬品業界ではマーケティングが不在だった。「マーケティング部」と書かれている名刺を人に渡しているのに、P.コトラーを知らない人もいた。 それでも売上は右肩上がりだった。MRに数字を持たせ、マーケティングは不在だった。営業とマーケティングがMR個人の能力に委ねられていたのである。
しかし、ついに、営業とマーケティングを分離しなければならない時代がやってきた。理由は、顧客が“突然変異”を起こすようになったからである。わが国の医療提供体制は、病床数が多いために医師や看護職を手厚く配分することが難しい状況だ。このことは、平均在院日数の長期化を導く。
現在進められている医療制度改革は、この“多すぎる病床数”を削減することを目的としている。厚生労働省によると、現在の入院回数を基礎とし、平均在院日数を10日として試算すると、急性期病床は42万床になるという。現在から20万床も削減される計算だ。薬が使われるのは急性期がメインであるため、このような試算が現実化すれば、製薬企業、医薬品卸は多くの“プラチナ顧客”を失うことになる。
厚生労働省が中医協に提出した資料によると、病院機能別の1床当たりの月間医薬品費(入院・外来含む)は次のようになっている。
・特定機能病院 ⇒38万1500円
・療養病床がある病院⇒5万800円
・老人病院 ⇒4万円
・臨床研修指定病院 ⇒32万3500円
・一般病院全体 ⇒19万7100円
多くの一般病院が療養病床に転換したり、“施設化”、“診療所化”すれば、その病院を担当していたMRの実績は天国から地獄に落ちる。この現象を「事故」として片づけるのか、それとも「必然の結果」と捉えるのかで今後の企業の業績に大きな格差が出てくる。
これは明らかに「必然の結果」である。ちゃんとMRの評価に連動するべきである。
評価する前に、マーケティング本部、営業戦略本部、システム情報部といった部署で主観的なデータ(自社の実績)と客観的なデータ(全病院の施設基準の届出項目など)を摺り合わせた上で、MRに「顧客を見る眼」を教育しなければならない。
最初にMRにやらせることは、たった3つのことである。
(1)担当病院の院内掲示に紹介されている施設基準を書かせる
MRが書いて持ってきたものを上司が確認し、「この基準を取っているということは紹介率が30%以上ということだね」など、それぞれの項目について説明する。
(2)担当病院のホームページを訪れ、病院の特徴と今後の方向性をまとめさせる
ビジネス界では、ホームページは企業の顧客に対する姿勢を表すものだと認識されている。病院についても同様だ。優秀なホームページには、連携先までちゃんと紹介されている。情報の宝庫である。
(3)(1)と(2)の内容をしっかりと把握した上で、病院の事務方と面談させる
DPCなど、診療報酬体系が出来高から包括にシフトしつつある。さらに後発品の使用を促進する施策が増えてきたため、医師の処方薬選択権が急速に奪われている。事務方から病院経営から見た医薬品使用の考え方などをヒアリングしておく必要がある。MSに事務方を紹介してもらい、是非、コミュニケーションを取ってほしい。この3つの活動を通じて、「自分の顧客は誰か?」「5年後、10年後の顧客は誰か?」ということを自問自答していただきたい。
(“コンサナリスト”川越満)